《ふしぎ工房症候群 オルゴール》5
ふしぎ工房症候群 「オルゴール」
朗読:福山潤
Chapter9 少女
それから数日が経ち、帰ることになった、僕から言い出したことだった。この土地にいると、結局思い出ばかりにしがみついてしまう。確かに住み心地はよかったが、いずれ都会に戻るなら、早めにと考えた結果だった。荷物を整理していたら、あることに気がついた、オルゴールはどこにもない、どこを探しても見当たらない、祖父に聞いてみたが、救助されたとき、それらしいものは何も持っていないという。道のどこかに落としたのか、しばらく考えてみて、思い出した。いや、違う、あの店だ、あのふしぎ工房という店にオルゴールを忘れてきたのだ、絶対にそうだ。僕はあそこで注文した、少女に会わせてほしいと、夢でなければ、どこかに控えと請求書があるはず。上着のポケットを探るとそれが出てきた、やっぱり、僕は居ても立ってもいられなくなって、家を飛び出した。もちろん、母にも祖父にも見つからないようにして、また心配をかけることになるが、早く帰ってきさえすればいい、まだ日は高い、まっすぐにあの店を向かえば、そう時間もかからないはずだ。あの湖へと通じる道を急いだ、思い出に縋らないと決めても、やはりあのオルゴールだけは手放したくなかった、大事にしまっておくだけでも心が落ち着く、そんな気がしていたからだ。山の中の小道を抜け、もうだいぶ湖に近づいたと思ったところで、やや強めの風が吹き、木々の葉をざっと揺らした、僕は何気にたち止まった、この感覚には覚えがある、そう思っていたら、手元にふあとしたものが落ちてきた、見ると、白い帽子だった、あれ、その帽子を不思議そうに眺めてから、はっとして辺りを見回した、視界の中には、誰もいない、でもこの帽子は、まさか、振り向くと、そこに彼女が立っていた、しかも幼い姿のままで。こんにちはと言って、少女は僕に会釈した、わが目を疑った、確かに彼女であることは間違いない、見間違うはずもない、あの時の姿のままなのだから、しかし、そんなことはありえない、彼女はもう大人になっているはずだ、だっだら、白昼でも見ているのか、首を強く振ってみた、でも、相変わらず目の前の少女は僕に笑いかけている。「君は一体」そう言いかけたとたん、少女が走り出した。「あ、待って。」急いで後を追った、少女を追っているうちに、湖へと出た、まだ日は高いとたかをくくっていたが、当たりはすでに夕暮れ時となっていた。おぼろげに霞む夕日の中を、少女は駆けていく、僕は必死で追いかける、少女は時々立ち止まって手招きをする、彼女の笑い声が頭の中に響いてくる、そして、ついに捕まえた。僕は荒い気で尋ねた、「どうして、君は年を取らないの。」少女はなぜそんなこと聞くのと首を傾げた。「だって、僕はもう大人だよ。君は僕と同じ年のはず。」すると、少女が少し悲しそうな顔をしたので、慌てて質問を変えた。「でも、よく僕のことが分かったね。それからすごく時間が経っているのに。」少女はにっこっと笑うと、「もちろんよ、忘れるわけないもの。」と言った。「僕もだよ、ずっと会いたかったんだ。」少女は私もと言って、恥ずかしそうにうつむいた、この時、今起きていることが現実であろうとなかろうとかまわない、この時間が永久に止まってくれればいい、夢なら覚めないでほしい、どうかずっとこのまま、僕は神にも祈る気持ちになった。ふいに、少女の表情が暗く沈んだ。「どうしたの?」と聞くと、もう行かなくちゃと言う答が返ってきた。「そんな、今あったばかりなのに。」少女はごめんなさいというともう駆け出していた、後姿が小さくなっていく、あの時と同じだ、とっさにそう思った。今追わなければ、もう二度と会えない。「待って、行かないで。」、車椅子を急速に発進させた、しかし、それがかえってまずかった、車輪が砂にめり込み、どうにも前に進まない、あせばあせるほど車輪は空回りする、見る間に少女の姿は小さくなっていく、「行かないで!」気づくと、僕は車椅子を捨てて前に歩き出そうとしていた、一歩進んでは転ぶ、立ち上がってはまた転ぶ、それでもまた立ち上がる、少女の姿はもう視界から消える寸前だった、僕は渾身の力で、二歩三歩と前へ進んで、また叫んだ、「僕をおいていかないでくれ。」少女の姿はもうなかった、僕はがっくりと膝を落とすと、むせび泣いた。「うんんん」すると、目の前に二本の足が見えた、恐る恐る顔をあげると、そこに笑いかける少女の姿があった。「ダメじゃない、大人のくせに泣くなんて。」目がそう言っているようだった。茫然とする僕を少女は屈んで優しく抱きしめてくれた、耳元に彼女の優しい声が響いた。「やっと自分の足で歩いたのね、あなたはもうわたしがいなくても大丈夫。」確かにそう聞こえた、その時。一陣の風が過ぎった、気づくと彼女は完全に目の前から姿を消していた、風に運ばれたというよりは、風にさらわれたという気がした。僕は茫然と少女がいなくなった空間を見つめていた。その後、祖父たちが探しにやってきたのはいうまでもない、さすがの祖父も怒りを隠せない様子だったが、僕の姿を見るなり、口を大きく開けたまま、二の句が継げなかった。その時、僕は二本の足で立っていた。
第九轨 少女
之后过了几天,决定回家去了。
是我提出来的。
再待在这地方,也不过是只会被回忆所吞噬。
确实,这儿住起来感觉很舒服。但总要回到城市去的,不如早点回去吧。
整理好行李后,我突然想起一件事。
八音盒不见了……哪儿都找不着了。
问了下祖父,他说把我救起的时候没有看到过那东西。
是不小心丢路上了吗……
稍稍回忆了一下后,终于想起来了。
不对,是那家店。我把八音盒忘在那家名为不可思议工房的店里了。肯定是这样……
我在那儿订购了,想要与少女见面的愿望。
如果不是在做梦的话,付款单应该还在这儿。
我从上衣的口袋中找出了付款单。
果然……
我开始坐立不安起来,飞奔出了家门。
当然,没有惊动妈妈和祖父。
不想再让他们担心……只要早点回来就行了。
时间还早,笔直朝着那家店走,也不需要花太多时间。
我急忙踏上了通往那片湖的道路。
尽管不想再被束缚于回忆中,但我还是不愿意丢弃那个八音盒。
因为总感觉,只要把它好好地保藏起来,心情就能平静下来了。
穿过山林中的小路,快到湖的时候,刮起了一阵大风,树叶在风中摇曳。
我不由停住了脚步。
这种感觉……似曾相识。
正这么想着的时候,有个软软的东西掉到了我手中。
低头一看,是一顶白色的帽子。
咦?
我有点不敢置信地打量着这顶帽子,然后环视了下四周。
周围没有任何人在……
但是,这顶帽子……
难道……
返过身时,她站在我面前。
而且……还是跟小时候一样。
“你好。”少女微笑着跟我打了个招呼。
一时间开始怀疑自己的眼睛。
不过我可以肯定是那个少女。不可能看错……因为她还是那时候的样子。
但是,这种事情怎么可能……她应该已经长大成人了呵。
难道这是白日梦?
我使劲地摇摇头,但眼前的少女仍朝着我微笑。
“你究竟是……”
我话音刚落时,少女便跑了起来。
“等等!”
我急忙追逐着她的身影。然后,来到了湖边。
太阳正当空照,但周围却已经像沐浴在夕阳中一般。
朦胧的夕阳中,少女向前奔跑。
我拼命地追着她。
少女偶尔停下来,向我招手。她的笑声在我头脑中回响着。
然后……终于追上了她。
我气喘吁吁地问她。
“为什么……你没有长大?”
少女微微歪着头,说,为什么要问这个。
“因为……我已经是大人了……你应该跟我差不多大的啊。”
少女的表情有点悲伤,我慌忙改换了话题。
“但是……你还认得出我呢。从那天到现在,已经过了很久了……”
少女嫣然一笑,说:“当然了。我怎么会忘记。”
“我也是……一直都想见你。”
少女说,我也是。羞涩地低下头。
这时,已经顾不上眼前的一切是现实还是幻想了。
如果能永远停留在这一刻……该多好。
如果是梦的话,我希望永远不要醒来。
请让我永远沉浸在梦中吧……
我小声地向神祈祷着。
突然,少女的表情变得有些阴郁。
“怎么了?”我问她。
“我得走了……”她回答说。
“为什么……我们才刚见面啊。”
少女说了句“对不起”,再次奔跑起来。
背影越来越远。
和那时一样……
我突然想到,现在不追的话,就再也见不到她了。
“等等,别走……”
我急忙摇起轮椅。但是,这样反倒更麻烦了。
车椅陷在沙砾中,怎么都前进不了。
越是焦急,车轮越是空转起来。
眼看少女的身影越来越远。
“别走……”
回过神来时,我已经从轮椅上站起来,想要往前走。
走一步,摔一跤,站起来,又摔了下去,但我仍站了起来。
少女的身影快从视野中消失了……
我用尽全力,两步,三步……向前走去。
再次大叫起来:“别离开我……”
少女的身影已经不在了。
我颓然地跪倒在地上,呜咽着哭了出来。
然后,我看到眼前有两条腿。
小心翼翼地抬起头,少女微笑着看着我。
“都这么大的人还哭,不行的哟。”
她的眼睛仿佛在这样说着。
少女俯下身子,抱住呆然的我。
耳边传来她温柔的声音。
“终于能用自己的双脚走路了呢。我不在,你也可以好好过下去了。”
——我听到她这样说。
那时,刮来一阵风。
回过神来时,她的身影已经完全不见了。
感觉……与其说是乘风而去,不如说是风将她带走了。
我呆然地凝视着眼前少女离开的地方。
不用说,之后祖父他们到处找我。慈祥的祖父也有点动怒了,但在找到我的时候,他张大嘴,半天没说出话来。
那时,我用自己的双脚站了起来。
Chapter10 確信
僕はしばらくこの町に残ることにした、少しずつ歩けるようになった姿を見て、リハビリを兼ねているならと、母も納得した様子だった、この町の環境が足を治してくれたと家族は信じて疑っていなかった。しかし、僕には別の目的があった、あることを確信していたのだ、そして、それを調べるためにこの町に残る必要があった。図書館、役場へと熱心に通う一方で、たくさんの人に会って話を聞いた、そして、ついにある記録へとたどり着いた。あの夏の日以後の記録に。少女はあの夏の終わりに引越していたわけじゃない、その年の冬を迎えるころ、この町でなくなっている。彼女は重い病気を患っていて、医師の勧めもあって、環境のよいこの町、夏の始まりとともにやってきた、そこで僕に出会った。病気だなんて一言も言わなかった、そんな素振りも見せなかった、彼女自身は自分の病気のことを知っていたと思う、だから、最後に宝物のオルゴールをくれた、そして最後に一つ彼女が約束してくれた言葉を思い出した、あの別れ際、僕のことをずっと見守っていると。これからは、彼女の分まで生きていこうと思う、彼女が僕に勇気をくれたから。
第十轨 确认
我决定在这座小镇里再待一阵子。
妈妈看到我慢慢地学会了走路,而且还要继续进行康复训练,便也同意了。
家人都深信,是这座小镇的环境将我的双腿治好的。
然而,我有着其它的目的。
我确定了一件事。
为了调查这件事,才留在了这座小镇。
我忙于奔走在图书馆和政府,碰到很多人,听他们说了些事。
最后终于找到了一份记录。
那个夏天以后的记录里记载着,少女并非在那个夏末搬走了,在那年秋末冬初,她在这座小镇里去世了。
她患有重病。在医生的建议下,那年夏初,来到这座小镇观光游览。
然后在这儿碰到了我。
她完全没有提到过自己的病情,也看不出她有什么忧愁。
我想她是知道自己的病情的……所以最后将珍贵的八音盒送给了我。
最后,我想起和她的约定。
那个离别的瞬间,她说会一直守护着我。
从今以后,要好好活下去,带着她的那份。
是她赋予了我勇气……
Chapter11 epilogue
時々、あの夏の事を思い出す、僕は本当にふしぎな体験をしたと思う、ふしぎ工房の老人と出会い、少女と再会した。ふしぎ工房に、あの後再び訪れてみたが、もうその場所にはなかった。祖父に聞いても、そんな店は知らないと言っていた。しかし、誰も信じてはくれなくでも、僕の中では確かな現実となっている。老人から渡された請求書と書かれた封筒は今も封を切らずに、手元に置いている。僕には読まなくても何か書いてあるのか分かる気がしている、きっとこうだ、「自分の足で立って、人生を歩いていきなさい。」もし、この先の人生でくじけるようなことがあったなら、その時に改めてこの封を切ろうと思う。少女のことを考える、あのオルゴールは老人が預かってくれているのだろうか、お前にはもう必要ない、そんな声が聞こえてきそうだ。オルゴールはなくなってしまったけれど、今でもあの音色を僕の心の中で奏でている。
第十一轨 尾声
偶尔,还会记起那个夏天。
我真的经历了一段奇妙的体验。
碰到不可思议工房的老人,接着与少女重逢。
之后,我也试着再去拜访不可思议工房,但工房已经不在了。
去问了下祖父,他却说,不知道有这家店铺。
但是,就算没人会相信,我也深信这一切都是现实。
老人交给我的写有“付款单”三个字的信封,我至今尚未拆开,只是收藏在身边。
我感觉,不去读也能知道他写的是什么。
定是……
“用自己的双脚站起来,走好自己的人生道路。”
我想,如果在今后的人生里遇到什么挫折,那时候再把这个信封拆开。
又回想起了少女。是老人帮我保管着那个八音盒吗?
“你已经不需要它了。”
仿佛听到有个声音这样说着。
八音盒不在了,但那音乐一直流淌在我心中。